写真:migakiba gotoの入り江から望む堂崎教会。キラキラと光る水面(入江)の奥に、赤茶色の煉瓦積みの壁、白いアーチ型の窓が5つ、そして濃い灰色の屋根を持つ、堂崎協会が見えます。自然に包まれた教会は凛としながらも優しい佇まいです。

05: 九州・長崎県五島市

土地と人との間から
何かが生まれる最初の一歩

2020年度プログラム

五島のテーマは「土地の記憶を受け継ぐ」でした。五島列島は「潜伏キリシタン関連遺産」の一部として世界遺産に登録された土地です。形ある歴史として残されてはいない文化を、人はどう受け継いでいくのだろう?という問いが今回の出発点としてありました。興味深いテーマではありますが、現地の人でさえ、普段ほとんど気にすることのない、むずかしいテーマでもありました。

参加していただいたのは、全国各地から6チーム。コロナ禍であったため、どのチームも実際に現地を訪れることはできませんでしたが、五島に受け継がれてきた歴史や文化のこと、またそもそも島がどんな場所なのかといったことをリモートで学んでいきました。そして、五島のテーマに対する各チームの興味や関心の違い(テーマに興味が持てないけど、他のことには興味が持てる、という興味の持ち方もふくめて)、職業のバックグラウンドのちがいに応じて、それぞれが個性ある個別テーマを見つけていきました。さらに、島の若者、子ども、事業者さん、自治体の職員、スナックのママといった人たちにオンライン上でのインタビューも重ねながら、各チームがそれぞれの案を磨いていきました。

教会や潜伏キリシタンの遺跡を巡る以外にも、人によっていろんな巡礼があるかもしれない、という問いから生まれたチームAOIの「スナック巡礼」。いちいち充電しなきゃいけない、という不便さが旅人と島民のコミュニケーションを生み出すと考えたチーム26のEVバイク巡礼「巡電」。第3の故郷をつくる、という強くキャッチーなコンセプトから生まれたチームカクセイキ「30歳以下30日間のワーケーション」。島の各所に置かれたメッセージ入りボトルから島の人が秘密にしている魅力を知っていくチームアマナの「メッセージボトル」。島民と島外にいる島の出身者をつなぐチーム橙の「ラジオ510番地」。そして、遠藤周作氏の小説の中に発見した「愛とは、棄てないこと」という言葉から発展して生まれたチームヨウカンの「棄てなかった旅」。

同じインプットでありながらも、こんなにバラエティに富み、しかもそれぞれが五島という土地の魅力や価値に光を当てるような内容になっていて、事務局一同感銘を受けました。一度も現地に来られなかったにもかかわらず、ここまで現地のことを掘り下げて案を練り上げたことに現地発表会に集まっていただいた地元のみなさんも「ほほう〜っ」となっておりました。

人と人が知り合って、たがいのことをより深く知るうちに、「いっしょになんかおもしろいことやろうよ!」となるような、そんな人と人の関係が、土地と人との間にも生まれうるんだな、と感じます。五島という土地と、なぜかこの土地に興味をもっていただいた方たちが「いっしょになんかやろうよ」と仲良くなれた、その大切な第一歩だったと思います。参加していただいたみなさま、協力していただいた五島のみなさま、本当にありがとうございました。

写真:migakiba gotoの現地事務局代表、中村直史さん

事務局代表

五島の巡礼を考える会

中村 直史

現地事務局&現地チームメンバー

写真:migakiba gotoの現地アドバイザー、有川智子さん

有川 智子

草草社代表/デザイナー

写真:migakiba gotoの現地チーム、濱口貴幸さん

濱口 貴幸

株式会社浜口水産 専務取締役

写真:migakiba gotoの現地チーム、藤匠汰朗さん

藤 匠汰朗

デザイナー

写真:migakiba gotoの現地チーム、松本治樹さん

松本 治樹

green hill 代表

写真:migakiba gotoの現地チーム、平崎雄也さん

平崎 雄也

株式会社カラリト代表

Field Tour五島で見てきた場所

福江島の教会をはじめとする潜伏キリシタン信仰の跡や絶景スポットなどを訪れ、現地事務局の中村さんと有川さんより潜伏キリシタンの精神を受け継いで伝える大切さについてお話しいただきました。また福江教会主任司祭の中村満神父様もお招きし、キリシタンの歴史や食、巡礼の意味などのお話を伺いました。オンラインで五島と参加者をつないだ「五島フィールドワーク24」では、中村さんと有川さんのガイドのもと、島のディープなスポットや郷土料理などをご紹介いただきました。

写真:migakiba gotoで実施したフィールドツアーの様子。夕暮れの五島の鬼岳の写真です。手前に茶色の芝生の丘、奥の方に海や山が見渡せます。現地事務局の中村さん、現地アドバイザーの有川さんが頂上に向かって登ってきています。
福江島の絶景スポット 鬼岳頂上からのながめ
写真:migakiba gotoで実施したオンラインフィールドツアーでのひとこま。五島の郷土料理が色とりどりに14種類ほどずらっと並んだ画像です。料理は魚の一夜干し、かまぼこ、ふくれもちなどです。
「五島フィールドワーク24」島の郷土料理

Lecturer五島で話を聞いた人

オリエンテーションでは北海道大学の岡本亮輔さんにお越しいただき、スペインのサンティアゴ巡礼などを例に、現代の巡礼スタイルや今後の日本や五島の巡礼ツーリズムの可能性についてお話しいただきました。ウェビナー(1)では、環境省九州地方環境事務所環境対策課長の泉勇気さんに、脱炭素社会にむけた地域循環共生圏の構築、地域の取り組みやその工夫の重要性についてお話しいただきました。

写真:migakiba gotoのテーマ講師、北海道大学准教授の岡本亮輔氏

テーマ講師

岡本 亮輔

北海道大学准教授

写真:migakiba gotoの環境講師、環境省  九州地方環境事務所 環境対策課長/統括環境保全企画官/地域循環共生圏構想推進室長 泉勇気氏

環境講師

泉 勇気

九州地方環境事務所 環境対策課長/統括環境保全企画官/地域循環共生圏構想推進室長

Presentation現地成果報告会

五島の現地成果報告会は、会場の「Knit(ニット)」よりライブ配信し、オンライン・オフラインの両形式での開催となりました。現地には五島市役所、商店街若者会代表、長崎新聞や学生の方々、そしてオンラインには長崎県庁五島振興局、五島のガイドの会、五島の私設図書館オーナーや自動車会社の方々にご参加いただきました。それぞれのチーム発表は、約2ヶ月間の研修の中で洗練されたオリジナリティ溢れるアイデアばかりで、現地の方々からも「島民よりも五島のことを考えてくれている感じがする」「おもしろい、実現に向けていい形になってほしい」など、応援のコメントをいただきました。最後に現地事務局代表の中村さんよりチームに向けて、「今回の目的はここを出発点に、みなさんの企画が花ひらくことだと思っています。そのままの形かどうかはわからない。もしかしたら別の場所や形でかもしれないけど、それぞれの人生の中で花ひらいていくことだと思います。ここで蒔かれた種たちがこれからいろんな形で芽を出して花を咲かせてほしいと思っています。今回コロナで会えませんでしたが、いつか五島にもぜひ来ていただきたいです」と温かいお言葉をいただき、今後の繋がりも楽しみな報告会となりました。

写真:migakiba gotoで実施した現地成果報告会の様子。オンラインで参加したチームのメンバーがプレゼンテーションする様子を大画面のスクリーンに映し出し、大きな机をはさんで、7名の現地事務局メンバーや参加者の方々が聞いています。
チーム発表の様子
写真:migakiba gotoで実施した現地成果報告会の様子。現地事務局のメンバーと、地元の参加者合わせて8名がうつった記念写真です。
現地事務局スタッフと五島の方々