秋田県中央部に位置する五城目町はかつて、交易の拠点として栄えました。現在も定期的に開かれる朝市の歴史は500年を超え、今でも地域の人々の生活を支えています。歴史ある営みや豊かな自然を享受する暮らしが息づく五城目町ですが、人口減少・高齢化は着実に進み、多くの人で賑わったと言われる目抜き通りも今やひっそりと静かなまちなみへと変わっています。しかし、この変化から目を背けるのではなく、町のあり方や人々の暮らし方を問い直していこうという機運がこの町には生まれ始めています。その中心には、ここ数年の移住者による新たな取り組みと、それを理解・受け入れ、呼応する地域の人々の存在があります。今までの地域のあり方や暮らしの否定や破壊ではなく、地域の物語に耳を傾けながら、新たな生き方、あり方を地域の人たちと実践していくのが五城目流。こうした町の機運を引き継ぎ、五城目町のテーマを「まざる・つくる暮らしの仕組み」としました。
五城目町を舞台に選んだのは6つのチーム。企業の同期で構成されるチームや、異なる地域をフィールドに活動する人同士で構成されるチームなど多様なメンバーが集まりました。現地事務局は五城目町を拠点として「学びをデザインする」ハバタク株式会社とサステナビリティを専門とする国際教養大学の研究者で組成。地域の文脈や生活者としての視点を共有しながら、参加者とともに新たな変化の兆しづくりに取り組みました。
フィールドワークでは小学校で行われた世界とつながるコンポストの授業や朝市通りの見学などを実施。これら予定していた行程への参加だけでなく、自ら偶発的な出会いを手繰り寄せ、地域の人々と顔の見える関係を築き、人々の生きた声に耳を傾けている姿が印象的でした。プログラムとして設えられた学びの枠を超え、参加者同士の対話や現地での出会いによって、様々な学びが創発されていきました。
プログラムを通じて参加者のみなさんに起きたのは、「地域への眼差し」の変化だったのではないでしょうか。当初は、都市の二項対立として地域を捉え、縮小高齢化する地方のために何か出来ないだろうかと考える参加者がほとんどでした。しかし約12週間を経て、一般論としての地域から、具体的で血の通った五城目町へと解像度が上がり、自分自身をその画の中に登場させることで「地域のために何かする」から「ここで私は何をしたいのか」へと主語、視点の転換が起きました。これが参加者の多様性を反映した多彩なアイデアが生まれた土壌になったと思います。地域の人々と参加者それぞれの視点がまざり、新たなアイデアが生み出されたことこそ、テーマである「まざる、つくる」そのものでした。
事務局代表
ハバタク株式会社 共同代表
小原 祥嵩
現地事務局・メンター
丑田 俊輔
ハバタク株式会社 共同代表
工藤 尚悟
国際教養大学国際教養学部 准教授
Fieldwork見てきた場所
1泊2日のモデルコースをもとに各チームで自由に巡るフィールドワークを2週末にわたり開催。初日は五城目小学校で行われた、世界とオンラインでつなぎコンポストを考える授業の見学と、「ただの遊び場」での交流セッション。二日目は「朝市」を見学し、建築中の「ツリーハウスプロジェクト」をのぞき、「BABAME BASE」のポコポコキッチンで五城目の食材を使ったランチをいただきました。五城目の人通りの少なさと、一歩なかに入った場で繰り広げられる、多様なつながりからなる豊かな営みとのギャップを体感することができました。
Lecturer話を聞いた人
オリエンテーションでは、シェアビレッジ役員の半田理人さんに、シェアビレッジ立ち上げの背景と仕組み、試行錯誤やこれからへの思いをお聞きしました。これから地域と出会う参加者にとって、どう地域とかかわりプロジェクトを根づかせていくのか、半田さんの歩みに重ねてイメージが広がるお話でした。ウェビナー(1)では、国際教養大学准教授の名取洋司さんをお迎えし里山イニシアチブのレクチャー。世界の里山には自然と経済が共存する上でのヒントがたくさんあることを知り、序盤にぴったりな示唆をいただきました。
テーマ講師
半田 理人
新法人シェアビレッジ 役員
環境講師
名取洋司
国際教養大学国際教養学部
グローバルスタディズ領域准教授
Presentation現地報告会
「まざる、つくる暮らしの仕組み」というテーマのもと、地域を探索してきた五城目チームによる現地報告会はオンライン開催。当日は秋田銀行の工藤槙さんや、五城目まちづくり課の柏さん、松橋さんをはじめ地域の方にもお越しいただき、つくり上げてきたプロジェクトを地域とどうつなげられるか、いつもより少し緊張した雰囲気でスタートしました。環境省よりご挨拶、ゲストコメンテーターの工藤さんのご紹介を経て、各チームの発表へ。前回のウェビナーよりぐっと中身が濃くなったプレゼンテーションに、ここまで伴走してきた現地事務局やメンターから熱いコメントがなされました。また工藤さんからも、これからチームが地域で活動をスタートしていくヒントになるフィードバックを多数いただきました。
後半は参加者の振り返り。現地事務局の小原さんのファシリテートで、migakibaを通じて何を思い、何を学んだのかをそれぞれの言葉で伝えていただき、共感したり、刺激をうけたりととても良い時間でした。締めくくりとしてこれまでのプロジェクトをつくり上げるためのディスカッションとは異なる対話ができました。なかなかリアルで会えなかった事を惜しみつつ、次回会える日を約束し、幕を閉じました。
地域レポート
01: 北海道・北海道名寄市
健康とは? スポーツとは?
「身体性」の本質に向き合う
事務局代表
Nスポーツコミッション 事務局次長
黒井 理恵
02: 東北・秋田県南秋田郡五城目町
地域と私の関係を
編み直す場としてのmigakiba
事務局代表
ハバタク株式会社 共同代表
小原 祥嵩
03: 関東・茨城県東茨城郡大洗町
楽しむことができる地域、
持続可能はそこからはじまる
事務局代表
株式会社カゼグミ 代表取締役
鈴木 高祥
04: 中国・広島県呉市(大崎下島)
人と自然が調和する
これからの「暮らし」を考える
事務局代表/メンター
一般社団法人まめな 共同代表/
ナオライ代表取締役
三宅 紘一郎
05: 四国・愛媛県大洲市
原点回帰で構想する
自然と文化を結ぶまちなみ
事務局代表/メンター
一般社団法人キタ・マネジメント企画広報係長
歴史資源活用係長 兼
株式会社KITA 代表取締役
井上 陽祐