migakiba osakiのイメージ画像。小高い場所から望む、大崎町の田畑の風景が広がっています。

02: 九州・鹿児島県曽於郡大崎町

資源のめぐりから、
新たな価値の循環を生み出す

2023年度プログラム

現代社会における私たちの生活は、無意識のうちに世界規模の物流の中に組み込まれています。日々の生活で触れるものがどこから届けられ、廃棄したものがどこへ消えるのかを知る人は少ないのではないでしょうか。家庭から排出されるゴミの83%を再資源化している循環のまち大崎町。このまちは、ほかのまちよりも少しだけ、ものの流れがよく見えます。資源の流れを見るとともに、日々の生活が世界とどのようにつながっているかを感じ・学ぶプログラムとしました。

大崎町での現地事務局は、大崎町の公民連携コーディネートをしている合作株式会社が務めました。参加したのは8チーム27名。地域内から3チーム、地域外から5チーム。地域をよく知る参加者と、地域に新しい視点を持ち込んでくれる参加者とが一緒になって地域をめぐり、相互にアイデアを生み出す環境が自然と活動に広がりをもたらしました。

フィールドワークでは、地域内で資源が巡る小さな循環と、世界的な物流に乗って資源が行き交う大きな循環を意識した行程としました。ものの最終的な行き先である埋立処分場からスタートし、地域内での完全循環が達成できている有機物の堆肥化施設、資源を45品目以上に分別する中間処理行程など、まずは廃棄から再生までのプロセスを見学しました。また、その後は産出額全国18位を誇る農畜産業および、それを支える飼料などを海外から受け入れる志布志港の港湾や飼料倉庫を見学し、地域の産業が大きな物流とともに成り立つ様子を目の当たりにしました。

フィールドワークと数多くのウェビナーを経て、地域内でより小さな循環を生み出す事業から、地域の中と外をつないだビジネスモデル、動脈産業と静脈産業とをつなぐアイデアなど、さまざまなスケールでの事業プランが磨き上げられました。また、地域内外の参加者が互いに強みやアイデアを持ち寄り、協働できるようなつながりが多く生まれました。今後、migakibaの縁をきっかけに、継続的に人がめぐり、事業が成長していくことを願っています。

写真:migakiba osakiの現地事務局代表、齊藤智彦さん

事務局代表

合作株式会社 代表取締役/ 大崎町政策参与

齊藤 智彦

現地事務局・メンター

写真:migakiba ishinomakiの現地アドバイザー、森佳代子さん

中村 夏紀

株式会社マドンナ. 取締役副社長
/公益社団法人新大隅青年会議所
直前理事長
/公益社団法人日本青年会議所 九州地区
鹿児島ブロック協議会 副会長

写真:migakiba ishinomakiの現地チーム、苅谷智大さん

鈴木 高祥

株式会社カゼグミ 代表取締役/合作株式会社 取締役

Fieldwork見てきた場所

初日は大崎リサイクルシステム構築の発端となり、40年以上の延命化に成功した埋立処分場を見学。その後、地域で排出されるゴミの60%以上を占める生ゴミや草木などの有機物を発酵の力で堆肥にする大崎有機工場や、分別されたゴミを回収し、資源として使いなおせるよう中間処理を行う「そおリサイクルセンター」をめぐり、住民・企業・行政によって磨かれてきた資源をまわす知恵を学びました。2日目は、クリエイティブなアプローチで環境問題に取り組む「若潮酒造」や耕作放棄地の土壌を活かした有機農業を試みるプロジェクト、今年オープン予定の体験型宿泊施設「circular village hostel GURURI」などの地域での実践者に直接お話を伺いました。リサイクルシステムはもちろんのこと、地域の人の想いや取り組みを知り、大崎町を捉える視点が増えるフィールドワークとなりました。

フィールドワークで埋立処分場の現場を視察したときの写真です。参加者の一人が大きなゴミの山の前でたたずんでいます。
埋立処分場の見学
フィールドワークで大崎有機工場を訪れた際の写真です。発酵熱で温かくなった堆肥に参加者が触れています。
大崎有機工場で発酵熱で温かい堆肥に触れる

Lecturer話を聞いた人

オリエンテーションでは、環境講師として、株式会社musuhi取締役・大崎町SDGs推進協議会サーキュラーヴィレッジラボ所長の大岩根尚さんにレクチャーを行っていただきました。「納豆のフィルムを洗ってリサイクルすることは環境にいいのか?」をはじめ日常の疑問から、生活の変化が環境に与えうる影響を科学的に実証する取り組みや、専門家とそうでない人による協働のあり方について、ご自身の経験や大崎町での活動をベースにお話しいただきました。硫黄島を拠点とする大岩根さんの大崎町への想いと期待が伝わり、これからのプログラムに向けた良いスタートとなりました。
またテーマ講師としては文化人類学者で、アトリエ・アンソロポロジー合同会社代表の中村寛さんにお話しいただきました。「ふれる、まじわる、かんずる」「理由ではなくプロセスを聞く」などフィールドワークを行う際のキーとなる所作や、地域の外から入っていく者として注意するべき点・心構えについて、ご自身のリサーチ経験や研究テーマを元にレクチャーをしていただきました。これからの循環を考える参加者へのヒントとして、綺麗な円では表しきれない「土着の循環」の可能性についてお話しいただき、リサーチはもちろんのこと、プロジェクトのアイデア構想にもつながるインプットになりました。

写真:migakiba ishinomakiのテーマ講師、有限会社若林商会 代表取締役/株式会社石巻工房 役員 若林明宏氏

環境講師

大岩根 尚

環境活動家 / 株式会社musuhi 取締役 / NPO法人薩摩リーダーシップフォーラムSELF 理事 / 大崎町SDGs推進協議会サーキュラーヴィレッジラボ所長

写真:migakiba ishinomakiのテーマ講師、Active Life Lab/代表 宮城了大氏

テーマ講師

中村 寛

多摩美術大学リベラルアーツセンター教授 / 同大学サーキュラー・オフィス担当 / アトリエ・アンソロポロジー合同会社代表 / KESIKI Insight Design担当

Presentation現地報告会

大崎町の現地報告会は会場とオンラインのハイブリッド形式で実施。会場には、ゲストコメンテーターとして大崎町役場環境政策課課長の松元昭二さんをお迎えしたほか、多くの地域の方々にもお越しいただきました。前半は、各チームからの発表です。例年より少し短い構想期間でしたが、どのプロジェクトもチームの資源と、リサイクルにとどまらない大崎町の魅力をうまく掛け合わせており、「循環」を土台とした文化が見えてくる発表となりました。
後半は、ゲストコメンテーターの松元昭二さんと事務局メンバーによるトークセッションと参加者による振り返りの時間です。migakiba大崎町の活動を振り返った感想や、実践フェーズでのポイントについて語っていただきました。migakibaで得られたネットワークを活用し、チームに足りない部分を補うことやファーストアクションを決定すること、アイデアに熱を注ぎ続けることなど、たくさんのヒントをいただき、今後の発展への期待が高まる会となりました。

スクリーンの横で、チームメンバー3人のうち一人がマイクを持って発表しています。
プロジェクト案を発表する参加者
会場の一番前に、2名の事務局メンバーとゲストコメンテーターが座っており、うち現地事務局長がマイクを持ってチームの発表にコメントをしています。3名の後ろには、他の参加者が座っています。
事務局とゲストコメンテーターからのフィードバック