南砺の土地がもたらす豊かな自然と他者に対して安泰をもたらす思いやりの心、古くから育まれてきたこの土地独特の精神文化を、民藝運動の創始者である柳宗悦は土の徳と書いて「土徳(どとく)」と呼びました。
南砺市井波は、富山県の南西部にある人口約8,000人の小さなまち。井波地域は600年の歴史を持つ、日本一の木彫りのまちとして知られ、2017年には木彫刻のまちとして日本遺産にも指定されました。まちを歩くと、あちらこちらからノミをふるう音が聞こえ、木々の香りが感じられます。そんな南砺市井波のmigakiba2022のテーマは「小さな循環を生み出すクラフツ運動」。井波のまちを中心に、森・山とのつながりを感じてもらいたいという想いを込めました。
現地事務局を務めたジソウラボは、そんな土地の文化を継承しながらも、現代の人口減に伴うさまざまな問題を積極的に解決するために業種業態の垣根を超えて集まった新たな活動体です。まだ見ぬ100年後の井波文化をつくり出し、短期的な成果を求めるのではなく長期的な視点で持続可能な施策を行い、土徳文化に自らを進化させていく力を加えた新たなまちづくりを行うため、「つくるひとをつくる。人材輩出のまち井波」を掲げ、さまざまなプロジェクトを動かしています。
そんな南砺市井波エリアへは、今回のmigakibaで4組11名のメンバーが参加してくれました。参加者は開催地の富山をはじめ、広島、長崎など全国幅広い地域から集まり、多彩なアイデアを磨き上げていくことができました。現地フィールドワークで五感で感じ取ってもらった井波のエネルギーをそれぞれの形で事業プランとして変容させていく様は、まさにこの井波の地が変容していく様を体現してもらっているようでした。
150日間でじっくり磨き上げられた事業プランは、井波の地だけでなくさまざまな場所・形で展開可能なものになったと感じています。この機会をはじまりとし、変容を遂げていくのを私たちも楽しみにしています。

事務局代表
ジソウラボ 理事 建築家/
コラレアルチザンジャパン
代表取締役
山川 智嗣
現地事務局・メンター

島田優平
ジソウラボ 代表理事 林業家/
株式会社 島田木材
代表取締役社長

藤井 公嗣
ジソウラボ 理事/
NAT.Development CEO/
株式会社藤井組 常務取締役
Fieldwork見てきた場所
初日は南砺市井波の中核ともいえる瑞泉寺や八日町通りをめぐり、井波の町の歴史や受け継がれてきた人々の精神性に触れました。また、井波の地理的な環境を学ぶべく山間部を訪れたり、地域ならではの和紙やギターなどのモノづくりを体感。2日目はジソウラボ・ケイギョーラボ・アキヤラボなどの井波のまちづくりの実践について学んだ後、まさにこれから新たに生まれようとしているブルワリーやコーヒー屋さんなどの現場を視察し、リアルタイムのまちの変化を体感する時間となりました。実際にまちを歩くことで感じるものと、井波で実際に活動する現地事務局との交流を通じて地域の解像度を上げ、それぞれの視点が更新されるようなフィールドワークとなりました。


Lecturer話を聞いた人
オリエンテーションでは、建築家でジソウラボ理事の山川智嗣さん、持続可能な社会のための社会投資等を手掛ける有井安仁さんにレクチャーを行っていただきました。山川さんには「観光客と職人の新たな付き合い方」をテーマとして、井波の歴史や現在の課題、ジソウラボが地域の多様なメンバーと取り組む「ホテル分散型」「逆募集型」のまちづくりについてお話しいただきました。有井さんには「暮らしが楽しい街はみんなが住みたい街になる」をテーマに、人口減少に直面する有田川町の未来を考えるプロジェクトなど、ご自身の経験をもとにお話しいただきました。

テーマ講師
山川 智嗣
ジソウラボ 理事 建築家/
コラレアルチザンジャパン
代表取締役

環境講師
有井 安仁
株式会社PLUS SOCIAL 取締役NOMCRAFT BREWING オーナー
Presentation現地報告会
井波の現地報告会は会場とオンラインのハイブリッド形式で実施。会場に道の駅「いなみ 木彫りの里」には南砺市の市長をはじめ、地域活性化や持続可能なまちづくり事業に関わる北川智之さんをゲストコメンテーターとしてお迎えし、温かい雰囲気のなか行われました。
前半はこれまでの取り組みを振り返り、各チームの発表へと移行。どのチームのプロジェクトも大きくブラッシュアップされており、中には試作品を用いてゲストや現地事務局にアピールを行うチームも見られ、各々の熱量がしっかり伝わる発表となりました。
後半はゲストコメンテーターの北川智之さんと現地事務局のトークセッション。各発表へのコメントをいただき、地域に持続的に関わっていくために大事にするべきことについて、それぞれの経験をもとに語っていただきました。自らのパッションを原動力にすることや、やりたいことを説明し続ける・やり続けることの大切さなどの示唆を得られ、今後の活動への期待が高まる会となりました。


地域レポート



01: 北海道・北海道勇払郡厚真町
多様な資本が織りなす挑戦の土壌

事務局代表
マドラー株式会社 代表取締役社長
成田 智哉



02: 東北・宮城県石巻市
暮らしのレジリエンスとは?
多様な地域との関わり方を探る

事務局代表
いしのまきグリーンツーリズム協議会
加納 実久



03: 関東・群馬県長野原町北軽井沢
地域未来の創造は同質の志をもつ仲間やエリアとの交流から

事務局代表
きたもっく事業戦略室 室長
フィールド事業部長 -事業構想修士-
土屋 慶一郎



04: 中部・富山県南砺市井波
土徳文化の土地で
自らを進化させる力を育む

事務局代表
ジソウラボ 理事 建築家/
コラレアルチザンジャパン代表取締役
山川 智嗣



05: 近畿・京都府京都市京北
小さくても事業をまず形に。
種を見つけ、ともに育てる場。

事務局代表
株式会社ROOTS 代表取締役
中山 慶



06: 中国四国・香川県三豊市
新しい地域経済の仕組み、
食文化を通じた持続可能性。

事務局代表
瀬戸内サニー株式会社代表取締役社長・
YouTuber
大崎 龍史



07: 九州・沖縄県うるま市
島人と探るこれからの豊かさ

事務局代表
株式会社うむさんラボ代表取締役/
株式会社レキサス代表取締役
比屋根 隆