香芝エリアのテーマは「みんなの郊外」です。香芝を拠点とするGood Job!センター香芝がオープンして4年。障がいのある人と新しいものづくりをしたり、さまざまな人と交流する機会をつくってきましたが、私たちが香芝という地域でさらにどんな役割をもてるのか模索している時期でもありました。この事業の目指す「地域循環共生圏の実現」について学ぶにつれ、私たち自身がより広い視野で地域と関わるチャンスになるのではないかと思いました。
このテーマのもと集まってくださったのは、障がいのある人たちの働く場を考えたいと集まったチームや中小企業診断士のつながりで結成されたチーム、ソーシャルインクルージョンに興味がある人たち、アートを通して地域を豊かにする実践をしているチーム、企業に所属しながらも社会的な活動に関心がある人たちなどの7チームです。これらの参加チームに対し、現地では奈良で起業をした方、奈良に移住をしながら地域の魅力を発信する方、子育てをしながら地域のさまざまなつながりをつくっている方、そしてGood Job!センター香芝のスタッフが現地チームとなり、この7チームをサポートすることになりました。
現地でのリサーチが難しいことはわかっていたので、私たちは香芝地域在住の障がいのあるメンバーを案内人に、車でさまざまなエリアを紹介するムービーを作成。いわゆる郊外の住宅地から、靴下の産地広陵町周辺、全国的にファンがいるシルク製品販売企業などを訪問しました。そういった具体的な地域や人との出会いから、「郊外」という漠然とした概念に、私たちなりの輪郭を探ることができました。
プロジェクトを進めるなかで、どのチームも独自のリサーチをもとに、初期視点をうまく立てていると感じました。私たちからは、いま郊外で起こっているさまざまなことを課題としてだけではなく、これからの社会にとって、まちのあり方を牽引する先駆的な取り組みとしても捉えてほしいと伝えました。
最終プレゼンでは、どの提案も香芝を含めた郊外に、経済的な視点、あるいは新しいカルチャーを耕す視点をもたらす魅力的な提案ばかりでした。香芝代表チームは結果的には障がいのある人が転職しやすい地域をつくりたい、という「まぜごはん」に決定しましたが、本当に他のチームの案も捨てがたく、現地チームのみなさんとかなり悩みました。選考の決め手はやはり、このエリアのテーマである「みんなの郊外」の実現、ということに立ち戻ることでした。
メンタリングやウェビナーを重ねるごとに、参加者のバックグラウンドやこのプロジェクトへの思いを知ることができました。その思いにこたえられるのか。この地域で継続して活動を続けていく、受け入れ側の私たちが問われることも多かったと思います。そういった意味では、期間限定の人材育成プロジェクトという枠組みをこえ、migakibaによって地域を具体的に変えていくバトンをわたしたちに渡されたと思っています。
参加チームのみなさん、現地チームのみなさん、ありがとうございました。いま、バトンは私たちにあります。
事務局代表
一般財団法人たんぽぽの家
常務理事 岡部 太郎
現地事務局&現地チームメンバー
森下 静香
Good Job! センター香芝センター長
三輪 竜郎
GoodJob!センター香芝 副センター長
沖本 可奈
かしば子どもプロジェクト 代表
小久保 よしの
フリーランス編集者・ライター
松本 梓
チアフル株式会社 代表取締役
Field Tour香芝で見てきた場所
たんぽぽの家が運営するアートセンターHANAにて映像撮影を実施。岡部さんと森下さんから、たんぽぽの家のこれまでの歩みとこれからについてお話いただき、メンバーが日々、アートを通じて自由に自分を表現し、交感しあう開放的な施設での活動の様子をご案内いただきました。オンラインフィールドツアーでは福祉以外の視点で郊外を見るため、奈良県へ移住し起業や地域活動を行う現地メンバーのお話を伺いました。
Lecturer香芝で話を聞いた人
オリエンテーションではアートレスな地域に入り込みアート活動を行う西尾美也さんによるレクチャーを実施。異質なものをつなぎ状況を変えうるアートの力を国内外の事例とともに学びました。山口美知子さんからは東近江三方よし基金での活動をもとに、地域を元気にするための地域経済循環そして社会関係資本の重要性についてお話をいただき、地域で持続的な活動を生み出すためのポイントについて考えました。
テーマ講師
西尾 美也
美術家
環境講師
山口 美知子
公益財団法人東近江三方よし基金 常務理事(東近江市企画部総合政策課主幹併任)
Presentation現地成果報告会
良く晴れた祝日の朝、これまでのウェビナーでも拠点としていたGood Job! センター香芝にて現地成果発表会を開催しました。香芝市長をはじめとする市の職員の方も現地に来ていただき、いつもより少しだけ緊張した雰囲気でスタート。各チームのプレゼンテーションは最後の1週間でさらに磨きがかかり、実現後の姿が具体的にイメージできる内容となりました。各7分間の発表時間の中でこれまで何をどう考えてきたのか、つくりたいビジョンとそこへ向けて何をするのかが魅力的に語られ、現地の皆様からも高い評価をいただくことが出来ました。香芝市長からは可能性をさらに広げるようなアイデアを交えて、全チームに対してコメントをいただき、今後の励みとなりました。
後半のトークセッションではプレゼンテーションへのフィードバックに加え、現地事務局、現地チームが得た気づき、実現に踏み出すコツなどを話しました。「障がい者福祉に長年取り組んできたが、大きな意味での福祉という部分でも可能性があることを感じた」「実現のコツはとにかく一歩目を小さくすること」など、これまで伝えられていなかったメッセージを語り合える時間となりました。
地域レポート
01: 東北・福島県いわき市
風景はいかにして耕されるのか?
潮目のまちから考えたこと
事務局代表
地域活性化プロジェクト MUSUBU
代表 宮本 英実
02: 中部・長野県上田市
上田の暮らしから育む
小さな創造性の芽
事務局代表
株式会社バリューブックス
池上幸恵
03: 近畿・奈良県香芝市
「郊外」の輪郭をたどり
ともに未来を考える
事務局代表
一般財団法人たんぽぽの家
常務理事 岡部 太郎
04: 中国・山口県山口市
土着のコミュニティから
テクノロジーの応用可能性を探る
事務局代表
山口情報芸術センター [YCAM]
社会共創ディレクター 菅沼 聖
05: 九州・長崎県五島市
土地と人との間から
何かが生まれる最初の一歩
事務局代表
五島の巡礼を考える会
中村 直史