写真:migakiba uedaの上田市街地。背景には、上田市の北側にそびえ、上田のシンボルともいわれる「太郎山」の山並みが広がっています。手前の近景には北陸新幹線が走っており、線路を挟むように住宅、商業施設、田畑があり、街並みを形成しています。

02: 中部・長野県上田市

上田の暮らしから育む
小さな創造性の芽

2020年度プログラム

上田のテーマは「暮らしが育む創造性」。上田市に今も残る「農民美術」と、かつてあった「上田自由大学」二つの文化が持つ在り方や考え方をヒントにして、それぞれのチームがプロジェクトを練り上げていきました。「農民美術」とは大正時代に芸術家・山本鼎が提唱し、上田市周辺からはじまった美術運動のこと。「自分が直接感じたものが尊い。そこから種々の仕事が生まれてくるものでなければならない」という考え方のもと、農閑期の農家に工芸品の制作を推奨しており、現在は上田地域の伝統工芸品として定着しています。「上田自由大学」も同じく大正時代に生まれたもので、農民を中心とする一般市民がお金を持ち寄り、先生を呼んで学ぶという自主的な教育機関でした。活動期間は十数年と短くはありますが、今でもこの活動から何か学べることはないかと、上田市でも講演会が行われています。

現地事務局は株式会社バリューブックスに所属するスタッフを中心としたメンバー。そこに日本を飛び越え海外からの参加者も含めた7チームが集いました。最初のオリエンテーションからプロジェクト発表までは、約2ヶ月。最初の1ヶ月はオンラインを通して上田の空気感やそこで暮らす私たち、上田で活動している人たちが日々感じていることを伝えるにはどうしたらいいのか、とにかく四苦八苦していました。各チームごと1〜2時間くらいの面談をしたり、上田のまちなかをぶらつきながらオンライン中継をしたり、上田のキーパーソンに出演してもらってインタビューの様子を公開したり、参加者のみなさんが各々話を聞きたい人に連絡を取ってインタビューをしたりと、頭に入れる情報が多くて大変だっただろうと思います。それでも、全てのチームがそれぞれ自分の仕事を終えた後や休みの日を使って発表をつくり上げてくれました。

バリューブックスが持つ「本」を中心に据えてプロジェクトを考えたチームもあれば、地域と関わるきっかけになるキッチンや部活動の「場所」をつくることの提案、上田の新しい「祭り」の提案、上田と都会を繋ぐ「食体験」プログラム、ワインの「樽主」になることで上田に対して愛着を持ってもらう提案、農民美術の「木っ端人形キット」を提案してくれたチームなどさまざまな発表がありました。最終的には何かに縛られることなく、それぞれの興味関心に対して素直な発表があったということが何よりうれしいことでした。そして個人的に一番気になっていた、「こんなに魅力的な人たちが偶然にも集まることができたのに、オンライン開催ではチームの枠を超えて繋がりあうことが難しいのではないか」「これきりの集まりになってしまうのはあんまりにも惜しい」という懸念は「migakiba UEDA NEXT」というSNSグループが勝手に立ち上がったことで、見事に払拭されました。migakibaで得た経験やつながりが、参加した誰かの胸の中で小さな芽になって、私の知らないところで育っていくんだろうなと思うと楽しみです。どうもありがとうございました!

写真:migakiba uedaの現地事務局長、池上幸恵さん

事務局代表

株式会社バリューブックス/実店舗担当

池上 幸恵

現地事務局&現地チームメンバー

写真:migakiba uedaの現地アドバイザー、内沼晋太郎さん

内沼 晋太郎

NUMABOOKS代表 / ブック・コーディネーター

写真:migakiba uedaの現地チーム、吉澤茉帆さん

吉澤 茉帆

株式会社茶色

写真:migakiba uedaの現地チーム、西山卓郎さん

西山 卓郎

株式会社バリューブックス

写真:migakiba uedaの現地チーム、神谷周作さん

神谷 周作

株式会社バリューブックス

Field Tour上田で見てきた場所

現地事務局で、上田を拠点に本を読む人の支援サービスを展開するバリューブックス、その拠点となる倉庫や店舗「本屋未満」を訪問。また上田の文化・歴史を知る上で欠かせない「農民美術」を学ぶべく、「上田市美術館(サントミューゼ)」や老舗の店舗「アライ工芸」を取材しました。さらにオンラインで実施したツアーでは上田で活躍する方々へのインタビュー、上田駅前から商店街へ街歩き、文化拠点「犀の角」への訪問とインタビューも。上田を存分に味わいました。

写真:migakiba uedaで実施したフィールドツアーの様子です。現地事務局バリューブックスの実店舗、本屋未満の店内です。木のぬくもりが感じられる明るい吹き抜けの店内に、新館を中心とした本が棚やテーブルに置かれています。その様子を、事務局長の池上さんが案内しています。
「本屋未満」を訪問
PCキャプチャ画像:migakiba uedaで実施したオンラインフィールドツアーの様子です。ウェビナー(1)の講師、上田市民エネルギーの藤川まゆみさんと、事務局長の池上さんが、並んで座っています。オンライン越しに参加者の質問に答えています。
上田で活躍する方々へのインタビュー

Lecturer上田で話を聞いた人

オリエンテーションでは、ものづくりの作り手・使い手・伝え手をつなぐ「ててて見本市」の企画・運営を行う永田宙郷さんによるレクチャーを実施。ててて見本市を実施するに至った背景から、社会の変化をとらえ、デザインすることの必要性について、投げかけをいただきました。ウェビナー(2)では、上田市民エネルギー理事長の藤川まゆみさんから、社会課題解決に向けた実践とご自身のモチベーションについて伺い、今後へのエネルギーをもらいました。

写真:migakiba uedaのテーマ講師、合同会社ててて協働組合共同代表/TIMELESS 代表/プランナー・プロデューサー 永田宙郷氏

テーマ講師

永田 宙郷

合同会社ててて協働組合 共同代表/TIMELESS 代表/プランナー・プロデューサー

写真:migakiba uedaのテーマ講師、NPO法人上田市民エネルギー理事長 藤川まゆみ氏

環境講師

藤川 まゆみ

NPO法人上田市民エネルギー 理事長

Presentation現地成果報告会

上田での現地成果報告会の会場はオンラインとオフラインのハイブリッドで実施。上田では、劇場&ゲストハウス「犀の角」に集まった約20名が、スクリーン越しに7チームの発表を見守ってくれました。
当日は14時にスタート。約2ヵ月間の取り組みを振り返り、各チームの発表へと移りました。最後の最後でプロジェクトを大きく変更したチームもあるなかで、どのチームもギリギリまで企画や資料を調整し、熱のこもった発表となりました。
プレゼンテーション後は、現地事務局の池上幸恵さんとアドバイザーの内沼晋太郎さんによる発表の振り返り。自分たち自身も上田について初めて知ることがあったこと、現地に来られず、各チームが「上田らしさ」の抽象度を上げて考え抜いたからこそ発想のジャンプが生まれたこと、上田を起点に全国へ広がる可能性への期待など、伴走してきたお二人から、説得力のあるメッセージをもらいました。
最後は、会場の上田市民エネルギー理事長・藤川まゆみさん、上田市議・斎藤加代美さん、バリューブックス代表取締役・中村大樹さんのメッセージです。実装の手前まで来ているプロジェクトも多く、参加者・スタッフとも、次は上田で会いたい、という気持ちをふくらませ終了しました。

写真:migakiba uedaの現地報告会の会場の様子。現地成果報告会の会場となった上田市の劇場「犀の角」で、記念撮影をしました。会場に集まった上田市のみなさん、事務局と、スクリーンに映るオンライン参加者を同時に撮影した集合写真です。
会場「犀の角」の様子
写真:migakiba uedaの現地報告会の会場の様子。現地アドバイザーの内沼晋太郎さんと、現地事務局長の池上幸恵さんが、プレゼンテーションに対してコメントをしています。ステージの上手におふたりが並んで座っています。
フィードバックをする池上さんと内沼さん