写真:migakiba kashibaで実施したオンラインフィールドツアーの様子。現地チームの松本さんが、奈良で起こした薬草ハーブを使った事業の説明をしており、そのパソコンの画面が映っています。

全体レポート

これからの循環を考える
150日間の記録

2022年度プログラム

migakiba 2022-2023では全国各地そして海外から多様な背景・専門性をもった41チーム139名の参加者が集まりました。現地でのフィールドワークとウェビナーを経て、どのようにプロジェクトを生み出してきたのか。各地を担当した全体事務局メンバーの視点を織り交ぜながら、約150日間の活動をまとめました。

参加者公募イベント

全体公募イベントにて、昨年度参加の中塚さんと小松崎さん、ディレクターの市川の3人のトークセッションの様子がうつっています。

今年度の参加者公募イベントは全体とエリアごとに実施。全体公募イベントの前半では7地域の現地事務局担当者より地域のプレゼンテーションを行い、地域で感じている機会や課題と参加者へ期待することをお話しました。後半ではIKEUCHI ORGANICの池内計司さんによる講演と、migakiba2期生とのディレクターの市川によるダイアローグを実施しました。エリア別参加者公募イベントでは全体公募イベントでは話しきれなかった地域により踏み込んだ視点から、現状や可能性についてお話しました。

1オリエンテーション

ウェビナーの画面をスクリーンショットした画像。右側に登壇者の野々宮さん。画面共有されている資料は、地域の方から大量に頂いたとうもろこしの写真。

5エリア合同で行った前半はmigakibaのプログラムに関する説明を実施。各エリアに分かれた後半では、各地域のテーマに関するレクチャーを講師より行いました。厚真地域では「多様な資本が織りなす挑戦の土壌」をテーマに、テーマ講師としてGOOD GOOD株式会社代表取締役の野々宮秀樹さん、環境講師として厚真町役場主幹の宮久史さんよりレクチャーをいただきました。

ウェビナーの画面をスクリーンショットした画像。上方にはウェビナー参加者の顔が並んでいる。下方の左側にはテーマ講師の野々宮さん、現地事務局長の成田さん、メンターの三浦さん、リ・パブリック現地担当の鈴木がそれぞれ映っていて話している。野々宮さんの講演タイトル。背景は野々宮さんが開発しているGOOD GOOD Secret Maison & Farm。宮さんがウェビナーの中で自己紹介をしている。プロフィールのスライドと、宮さん、現地事務局長の成田さん、リ・パブリック鈴木が映っている。

Voiceひとりひとりの挑戦を育む

「多様な資本が織りなす挑戦の土壌」をテーマに据えた厚真では、広大なゴルフ場の開発跡地を商談が出来る滞在可能な公開生産牧場として再生する野々宮さんから、金融資本を呼び込みながら自然資本を擦り減らすことなく循環させていく事業ビジョンが語られました。また、林業の専門家である宮さんからは、行政の立場から挑戦者が集まる厚真という町の土壌をどうつくるかについてのお話がありました。厚真に集う挑戦者が資本として見出した地域資源はさまざま。migakibaの参加者が厚真の何を資本として感じ、自身の挑戦へとつなげていくのか、期待が高まるオリエンテーションになりました。

厚真エリア担当鈴木敦写真

鈴木 敦

厚真担当

2フィールドワーク事前映像

北軽井沢でのフィールドワーク中における二上山の山林を紹介している映像の写真です。

地域の風景や現地事務局の活動、各地域のテーマで先駆的に活動をする人のインタビューを撮影した映像を共有。また、これからチームごとにリサーチとプロジェクトづくりをしていく上での切り口となる「初期視点」のつくり方に関するレクチャー動画を同時に配信し、動画から得た気づきとそれぞれの興味・関心とを掛け合わせることで各チームの初期視点を考えました。

3全体ウェビナー(1)

全体環境講師の長谷川琢也さんがレクチャー内でフィッシャーマン・ジャパンのミッションである「水産業を新3K(カッコよくて、稼げて、革新的な)産業へ」と書かれているスライドを表示しながら説明している様子です。

全体ウェビナー(1)は7地域合同で開催されました。前半は全体環境講師として一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンのCo-Founderである長谷川琢也さんより、ご自身が立ち上げたフィッシャーマン・ジャパンのご活動やその背景にある日本の漁業の問題などをお話いただきました。後半は長谷川さんのレクチャー内容を踏まえて、参加チームごとに分かれて自分たちの初期視点の設定後、リサーチについて学び、この後のフィールドワークで意識するべき視点を養いました。

全体環境講師の長谷川琢也さんがレクチャー内でフィッシャーマン・ジャパンの取り組み紹介を説明している様子migakibaディレクター陣が初期視点をつくる上でのポイントを話している様子参加者がチームの初期視点を設定するためのディスカッションをしている様子

Voice地域を自分ごと化していく第一歩

参加者は、フィッシャーマン・ジャパンの長谷川さんのお話や、migakibaディレクター陣による初期視点をつくる上でのポイントについてのトークを聴きながら、地域の課題解決ではなく、自分たちの意思を起点にどのように地域と関わりを持っていくのかを模索していた様子でした。とくに長谷川さんのレクチャーでは、実践をされてきたからこそ語れる綺麗事ではない内容は、参加者にとって刺激が多く、参加者からはたくさんの質問が飛び交いました。この後のフィールドワークに向けて、地域をフィールドにそれぞれのチームの興味範囲を重ね合わせて自分ごと化するマインドセットが生まれた回になりました。

石巻エリア担当の大山貴子のプロフィール写真です

大山 貴子

石巻担当

4参加者フィールドワーク

地域住民に開かれた木材加工工場である「あさまのぶんぶんファクトリー」の敷地内を参加者が自由に歩きながら見学しています

北軽井沢エリアでは1泊2日のフィールドワークが行われ、東京、京都、広島、群馬、神奈川など各地から参加者が集い、ほぼ全チームの参加者が現地に足を運ぶことができました。1日目は現地事務局を務めていただいた有限会社きたもっくが保有する山林や薪製造所、地域に開かれた工場などを見学した後、長野原町が推進するバイオマス産業都市構想について直接お話を伺う機会をいただきました。1日目の締めくくりには、参加者がチームビルティングも兼ねて協働して夕食をつくり、焚き火を囲む時間に。2日目は、狩宿集落と地産住宅を見学後、きたもっくの会長でありmigakiba北軽井沢のテーマ講師でもある福嶋誠さんによるレクチャーを受け、メンタリングを行いました。各チームの興味関心を把握しながら、チーム間の交流もでき、実りのあるフィールドワークとなりました。

きたもっくが保有する森の中で育つ木々を仰ぎ見ています昔ながらの炊飯鍋がかまどの上で美味しそうに白い湯気をあげて、米が炊けたことを知らせています

Voice自然の恵みと脅威を前提とした事業づくりを体感する

今回のフィールドワークで訪れた北軽井沢の土地でまず目に入るのは、天明の大噴火によってこの地を一瞬でリセットした浅間山です。有限会社きたもっくが保有する施設や土地を見学する際も、幾度となく浅間山の存在を(視覚以外で)身体が感知するという瞬間があったのですが、その体験を通してきたもっくの事業の根底にある「Luomu」、すなわち自然に従って生きるということの意味と、そしていつまた自然によって生活の全てがリセットされるかもしれないという環境の中で事業を展開する上で必要な心持ちを、頭ではなく、身体で理解できた気がしました。

北軽井沢の担当者が笑顔で写っています。

増井 尊久

北軽井沢担当

5全体ウェビナー(2)

東日本地域の参加者23名ほどが、一斉に1名の発表者の話を聞いています。

全体ウェビナー(2)は、大きく東日本エリア(厚真、石巻、北軽井沢、井波)と西日本エリア(京北、三豊、うるま)の2エリアに分かれて開催しました。各地域から2〜3チーム代表して、初期視点を元に、実際現地に訪れたフィールドワークで撮影した写真や作成した歴史年表などを使いながら、自身のチームのリサーチや現地の方々に伺ったインタビューの内容などを発表しました。ぞれぞれのアイデアの種を他地域へシェアすることで、アイデアを磨きはじめる第一歩の機会となりました。

6migakiba サミット

サミットの会場とオンライン参加者が全員映った集合写真

migakibaの現役生や卒業生、各期の現地事務局代表の方々が一同に介するmigakibaサミットを開催。1期生から3期生まで、会場とオンライン合わせおよそ120名以上の方々が参加しました。migakiba終了後の活動を報告するプレゼンテーションの後に、ゲストアドバイザーとして2期名寄エリア現地事務局代表の黒井理恵さんと、NPO法人ETIC. 理事・事務局長の鈴木敦子さんを迎えクロストークを展開。懇親会では世代や地域を超えた交流を通して、新たな創発が期待される活気に満ちた時間となりました。

過去の参加者がプレゼンテーションをしています懇親会にて参加者がマイクを持って話しています

Voice地域と期を超えたmigakibaのつながり

migakibaを通じた多くの人たちの変化や、地域で実践されていくアクションの数々に、とてもワクワクしながらプレゼンテーションを聞いていました。また現役の参加者は、これから自身のプロジェクトを構想していく上で、アウトプットイメージを改めて描きなおし、migakiba終了後も「自分たちが本当にやりたいか」というパッションと向き合う機会となったと思います。今後も継続的に、地域を超えたつながりと、多くの実践が生まれていくことが非常に楽しみです!

南砺の全体事務局担当者のプロフィール写真です

藤 匠汰朗

南砺担当

7地域別ウェビナー(1)

オンラインで実施した第一回目地域ウェビナーの様子。プロジェクトのアイデアスケッチの発表を、皆が真剣に聞いている。

フィールドワークを経て初めての地域別ウェビナー。各自が立てた問いと、現地で経た体験や五感を使って感じたことを合わせながら練り上げてきたアイデアを発表しました。事務局長やメンターそれぞれの視点からのリアルで率直なフィードバックを受け、他チームとも意見交換を交わしながら、チームの方向性をまとめました。

8地域別ウェビナー(2)

オンラインで実施した中間発表の様子。各地域のZINEを集めたプラットフォームをつくるアイデアを発表したチームのアイデアの概要と解決したい課題が写っている。メンターがこのアイデアに対してコメントする様子を、皆が熱心に聞いている。

各チームの考えるアイデアについて7分ずつの中間発表を実施。前回の地域別ウェビナー(1)から内容がブラッシュアップされ具体化してきました。フィードバックの最後にはネクストアクション・今後のスケジュールが見えることを目標としながら、ディレクター、現地事務局やTAによるフィードバックを行いました。

9全体ウェビナー(3)

クリエイブル代表瀬川秀樹さんによるメンタリングの様子。参加者が瀬川さんの話を聴きながらメモを取っている様子が映っています。

中間報告会までで磨き上げた初期視点のアイデアを具体的な事業として展開していくための事業化ウェビナーの第一回目を開催しました。今回はクリエイブル代表の瀬川秀樹さんを講師にお呼びして、パッションを基点に持続的な事業を作るためのビジネスプランの組み立て方法や対象顧客と課題の設定についてレクチャーをしていただきました。瀬川さんのレクチャーの最後には、希望チームに対してメンタリングの時間があり、各チームは、自身の現在地を共有しながら顧客の設定や考えているサービスについて瀬川さんにアドバイスをいただきました。

10地域別ウェビナー(3)

花屋さんによるメンタリングの様子

前回の瀬川さんの事業化ウェビナーを通してブラシュアップしたアイデアをもとに、対話しながらメンタリングを行う回でした。厚真エリアでは、アイデアの対象はどのような人で、その人が抱えている問題が、このアイデアでどう解消されるのか、という視点からメンタリングがなされました。既に現地での実施を視野に入れたアイデアも見られ、今後の具体化が期待される内容でした。

11全体ウェビナー(4)

ウェビナーで使うワークシートが映っており、高岡氏からビジネスモデルマップの作り方のレクチャーを受けている様子

数多くの企業の創業支援に伴走してきたGOB Incubation Partnersの高岡さんを事業化講師に迎え、「ビジネスフラッシュデザイン」と題したレクチャーと演習を実施していただきました。各チームが考えてきた事業アイデアを、今一度、基本的なビジネスモデルづくりのフレームへと落とし込むことで、解像度が低い部分や考えが及んでいなかった部分を網羅的に把握することができました。

11地域別ウェビナー(4)

発表者の1名が、自分のチームのスライドににあるペルソナの1例をメンターや他のチームのメンバーに説明している様子

前回の高岡さんの事業化ウェビナーで学んだビジネスモデルを元に、ペルソナ・ターゲットをひとりに、そして詳細を絞り込むことで、アイデアの強みや優位点を洗い出し、更に完成度が高まった7チーム。プログラムスタートからの4ヶ月間の中で生まれたチーム間連携のアイデアの発表も多々見られ、次回の現地報告会での発表が大きく期待される最後の地域別ウェビナーとなりました。

12現地報告会

ハイブリットで開催した三豊現地報告会の集合写真。みんな清々しい充実した顔をしています。

150日間を通して磨き上げてきたプロジェクト案を、地域のみなさんに向けて発表するハイブリッド形式の現地報告会。三豊エリアでは、ゲストハウス「ku;bel」にて、参加した7チームが地域テーマであった「食」を起点にした地域共生循環圏に基づくアイデアを発表しました。チーム同士や地域のみなさんとのコラボレーションが生まれ、まさに創造とは共創であることを感じるセッションに。後半のトークセッションでは、migakibaで一番大変だったことなどこれまでのプロセスを振り返りながら、次の一歩をどう進めるか、建設的な意見を出し合いました。穏やかな三豊の空気に包まれ、和気藹々と温かな雰囲気で幕を閉じました。

13全体発表会

プログラム参加者がプレゼン資料を投影しながら、マイクを持って話している様子

7地域を代表する各1チームが全体の場でプロジェクト案を発表する、全体発表会が開催されました。会場である常盤橋タワー MY Shokudo Hall & Kitchenと全国からの参加者・視聴者をオンラインでつなぎ、およそ300名以上の方々にご参加いただき、活発に意見やコメントが飛び交うセッションとなりました。ゲストコメンテーターとして、バリューブックス 取締役の鳥居希さん、issue+design代表の筧裕介さんを迎え、各チームのプレゼンテーションに鋭くも温かいフィードバックをいただきました。トークセッションでは、今の時代に求められる新しい豊かさとは何かを探りながら、拡大ではなく循環させる仕組みを考える場となり、migakiba150日間を締めくくる最終イベントを終えました。

全体発表会の会場参加者とゲストアドバイザー、スタッフ26名が写っている集合写真ゲストアドバイザーの鳥居さん、筧さん、モデレーターの市川の3人が座ってクロストークをしている様子

Voice共創から生み出すサステナブルな未来

地域のリアルな声を聞き、テーマに寄り添い、自分たちのパッションと向き合って考え抜いた150日間の成果を発表した全体報告会。環境や社会におけるさまざまな問題が山積し、複雑化している現代において、自然や社会と心地よい関係性を築きながら豊かな暮らしを育むようなアイデアが溢れているように思いました。
いまの時代に求められる豊かさとは何かという壮大な問いを前にして、大きな絵で描きながらも、明日私たちができることは何か?と地域に寄り添う想いと軽やかな行動力。既に一歩を踏み出して実践しているチームが多く、いま求められることと自分たちの想いを紡いで、社会を循環させるアイデアへと柔軟にブラッシュアップさせていく姿が印象的だったように感じます。migakibaプログラムは全体報告会を持って終わりますが、みなさんの活動は始まったばかりなのだと希望を感じる報告会となりました。

三豊担当者の今村プロフィール写真

今村 裕美

三豊担当