migakiba nagahamaのイメージ画像。琵琶湖に浮かぶ2つの島が写っています。

01: 近畿・滋賀県長浜市

日々の暮らしから育む、
根のある循環

2023年度プログラム

日本一大きな湖、琵琶湖の北部に位置する長浜市。日本海、東海地方、関西地方の結節点として、さまざまな人や文化の交流が行われてきた地域です。migakibaでのテーマは「自然の恵みを後世につなぐ」。人々が時に厳しい自然や風土と上手につきあいながら暮らしの中で育んできた知識・知恵を、どのように次の世代につないでいくか、という問いを込めたテーマにしました。

長浜市に集まったのは、奈良県や兵庫県、茨城県など全国から7チーム、合計23名の参加者。すでに地域活動をしている方が多いのが特徴で、中には学生や企業所属の方もいました。現地事務局を務めたのは8名の女性移住者のコミュニティ「イカハッチンプロダクション」のメンバー。「自分たちの暮らしを自分たちで楽しくする」ために、雑誌制作や情報発信などを通じて地域における新たな視点を掘り起こすような活動を行っています。

フィールドワークでは、晴れ、雨、雪、雷を1日で何度も繰り返す「伊香しぐれ」の天候の中、長浜市木之本町の北国街道や湖岸に位置する菅浦集落を訪れました。動画や文章では伝わりにくい、空気や湿度、人々の何気ない振る舞いや気持ちを感じたことで、参加者には大きな視点の変化・深化があったようでした。

終盤で事業構想を大きく変えたチーム、自分たちのやりたいことを改めて見つめなおしたチーム、湖北地域に寄り添った提案をつくりあげたチーム。プログラムが進むごとにアイデアが変容し、磨き上げられていく様子に驚かされ、同時にそれぞれの視点の豊かさに、私たち自身も刺激を受けた瞬間でした。

約90日間の濃密な期間の中で練られたアイデアがここからどのように発展し、それぞれの活動に昇華されていくのかとても楽しみです。長浜市内ですでに行われている、さまざまな事業との連携なども含め、今後もゆるやかにつながりあいながら、ともに未来について考える仲間になれたらと思います。

写真:migakiba nagahamaの現地事務局代表、荒井恵梨子さん

事務局代表

イカハッチンプロダクション /
合同会社kei-fu 代表

荒井 恵梨子

現地事務局・メンター

写真:migakiba nagahamaの現地アドバイザー、船崎桜さん

船崎 桜

イカハッチンプロダクション/長浜市地域おこし協力隊

写真:migakiba nagahamaの現地チーム、對馬佳菜子さん

對馬 佳菜子

イカハッチンプロダクション/合同会社nagori 代表/成安造形大学附属近江学研究所 客員研究員

Fieldwork見てきた場所

初日は2グループに分かれてのフィールドワーク。発酵コースでは、北国街道沿いにある醤油蔵や酒屋を見学し、昔からある暮らしの営みに触れました。白木屋醤油店は木之本に3つある醤油蔵のひとつで、江戸時代に建てられた建物は有形文化財にも登録されています。山路酒造は酒屋としては珍しく、桑を使った甘いお酒・桑酒を製造しており、木之本に2つある造り酒屋のひとつです。信仰コースでは、高月町にある観音堂である竹蓮寺を訪れ、長浜を代表する文化のひとつ、「観音信仰」についてお話を伺いました。最後に2グループが合流して、滋賀県最古の私設図書館「江北図書館」を見学し、かつての生活様式を記録した数々の本との出会いを参加者それぞれが楽しみました。フィールドワークの2日目は、西浅井町にある湖岸集落の菅浦を訪れ、郷土資料館で地域の歴史を学びました。最後は公民館にて、現役で活躍されている2人の漁師の方々に、琵琶湖とともにある漁師の生活についてお話いただきました。

フィールドワークの1日目に山路酒造を見学した時の写真です。店主の説明に参加者が聞き入っています。
山路酒造にて店主のお話を伺う
フィールドワークの2日目に菅浦集落を訪れた時の写真です。快晴の中、みんなで須賀神社までの参道を登っています。
菅浦集落にある須賀神社への参道を登る

Lecturer話を聞いた人

オリエンテーションでは、環境講師として滋賀県立琵琶湖博物館専門学芸員の橋本道範さんに、琵琶湖とフナズシをはじめとする地域食文化との関係性についてのレクチャーを行っていただきました。両者の関係性が常に変化してきた歴史をたどりながら、「大事なのはこれからどういった未来をつくっていくかだ」という力強いメッセージをいただき、これからの暮らしや文化を構想するmigakibaらしいスタートを切ることが出来ました。またテーマ講師としては、移住者として地域に入り、なれずしの研究やお弁当づくりを行っている堀江昌史さんにレクチャーを行っていただきました。ご自身の活動を通して「地元の魚や野菜を美味しく食べてもらうことが、地域の田畑や湖に関心を持ってもらうことにつながり、湖北の風景を守ることになる」というメッセージをいただきました。また移住者である「嫁」が実は地域の伝統を守って来た大事な存在であったという堀江さんからの指摘もあり、今回の長浜地域のテーマである「自然の恵みを後世につなぐ」に参加者が挑む上での重要な点について議論がなされました。

写真:migakiba nagahamaの環境講師、琵琶湖博物館 学芸員、橋本 道範氏

環境講師

橋本 道範

琵琶湖博物館 学芸員

写真:migakiba nagahamaのテーマ講師、能美舎、堀江史氏

テーマ講師

堀江 昌史

能美舎

Presentation現地報告会

長浜の現地報告会は会場とオンラインのハイブリッド形式で実施。会場には長浜市役所からゲストコメンテーターとして、未来創造部政策デザイン課課長の柴田拓也さんと、未来創造部未来こども若者局子ども若者応援課の茂森貴洋さんのおふたりに加え、フィールドワークでも視察した江北図書館の皆様にもご参加をいただきました。前半は参加者からの事業アイデアの発表と現地のゲストからのフィードバックが行われ、後半はアイデアの方向性が近いチームをグループ化し、参加者や現地事務局とのアイデア実現に向けたディスカッションを行いました。江北図書館や長浜市役所をはじめ、パートナーやサポーターになっていただけそうな方々から、直接フィードバックをいただけたことで、アイデアを実現する上での解像度が大きく高まりました。最後はmigakiba参加者と事務局メンバーのみで、今回のmigakibaに関する振り返りセッションを実施。長浜から得た多くの気づきや自己の視点の変化が語られました。

スクリーンの横で参加者二人が笑顔で現地ゲストからフィードバックを受けています。
発表後にゲストからフィードバックを受ける参加者
参加者3名が座って現地ゲストの発言に真剣な表情で耳を傾けています。
現地報告会後の振り返りセッション